2017年8月31日木曜日

2017年8月19日土曜日

【研究会】8/19(土)「デジタル時代の次元の折り重なり」(於:MEDIA SHOP)


第4回新視覚芸術研究会「デジタル時代の次元の折り重なり」

 日時:8月19日(土)12時30日〜16時
 場所:京都 MEDIA SHOP
 パネリスト:水野勝仁(甲南女子大学)
       永田康祐(アーティスト/東京藝術大学)
       馬場伸彦(甲南女子大学)
       飯田 豊(立命館大学)

ヒトは三次元の物理空間を絵画や写真といった二次元の平面に変換してきた.次元の折り重ねが最も成功したのは,ボタン一つで撮影できる写真であろう.写真は三次元を二次元に落とし込み,二次元のなかに三次元を見せる.写真の平面には二次元と三次元とが折り重なっている.そして,20世紀はまさに写真と映画とが見せる次元の折り重ねを見続け,考え続ける時代であった.

20世紀後半にテレビ,そして,コンピュータが登場し,写真・映画の次元の折り重ねに変化が起きた.テレビは三次元を一次元の電気の流れに,コンピュータは三次元を一次元の情報の流れにした.三次元から一次元へと変換され,写真・映画がもつ世界をそのまま写し取るインデックス性が曖昧になった.しかし,コンピュータは写真や映画に擬態して,世界をそのまま写し取っているように見せている.あるいは,写真・映画のインデックスを保持しようとコンピュータがプログラムされていると言ったほうがいいのかもしれない.コンピュータはインデックス性を絶対的なものとしないため,どんなものにも擬態できるのである.

コンピュータ科学者のアラン・ケイは,「Doing with Images makes Symbols(イメージを操作してシンボルをつくる)」というスローガンを掲げて,コンピュータの画面のほとんどを占めているグラフィカル・ユーザ・インターフェイス(GUI)を完成させた.コンピュータにはプログラムというシンボルとディスプレイ上のイメージがあり,これらを操作できる.イメージを操作すればプログラムが動き,プログラムを操作すればイメージが変化する.コンピュータは三次元の物理世界をプログラムという一次元の流れで制御し,それをディスプレイが提供する二次元の光平面に表示する.ディスプレイのイメージは一次元のプログラムと三次元に位置するヒトから操作されている.

20世紀を支配した映画・写真がインデックス性を絶対視するものだったのに対して,21世紀のイメージを担うコンピュータはインデックス性が曖昧になっている.その代わりに,コンピュータは物理世界から遊離した一次元のプログラムと二次元のディスプレイと三次元のヒトとが折り重なる場となっている.だとすれば,コンピュータを経由することで,二次元のディスプレイに表示されているイメージを三次元の物理空間に折り返して重ねることが可能なはずである.今はまだ二次元の平面に縛られている状態ではあるけれど,いずれは三次元そのものを操作可能にしていき,次元を自由に折り重ねた表現を生み出すだろう.コンピュータとともに生まれる次元の折り重なりとその表現を考えたい.